新型こけしとは

「新作のオリジナルこけし」をご紹介

全日本こけしコンクール(白石市主催)の分類によれば、今回制作するこけしは「伝統こけし」や「創作こけし」ではなくて「新型こけし」になります。

新型こけしとは「量産可能で市場性のあるもの」と定義されたこけしのことです。そして、新型こけしは伝統こけしのように工人ひとりだけによる制作ではなく、分業によって完成させてもよいことがわかりました。自由な発想によって制作することが出来るので、時代の要請を反映し、作品には雰囲気に合った詩情を誘うような題名がつけられているのが特徴です。


佐々木こけし工房の新型こけし

今回新作するオリジナルこけしは、最新のスタイルを追求するために、匠の技に工業デザインの知恵を加えました。意匠のヒントは「ミュージカルCats」の原典となる小説「キャッツ」(イギリスのTSエリオット作)からインスピレーションをもらいました。

こけしは東北地方の産物であることから、昔から可愛がられている日本猫をモチーフにして想像を膨らまし、この新作こけし(ネーミングは検討中)は、ユニークでコケティッシュな作品に仕上げることをテーマにしながら、さらに表現に優雅さをつけ加えていきます。


この写真のこけしはまだ道半ばの未完成品です


耳があるとコケティッシュらしさが醸し出されます

この形に匠の技に現代の発想を加えて、ロクロ加工(鉋がけ)・木肌保護・筆使いを極めた新しい装いのこけしを登場させます。多くの方に出来栄えを感じ取って戴けると嬉しいです。

これまでのこけしにはない【新しい装い】を生み出す【匠の技】を紹介します。


開発した新作こけし3種類

  1. 日本猫の性格を写実性を加えて表現した描彩
    いにしえより日本画が得意としてる抽象と写実を融合させて描きます。

  2. 首と胴体を一緒にした「つくり付け」に細工を施した鉋掛け
    磁器やガラス工芸にはないロクロだからこそ削り出せる形を極めます。

  3. 滑らかな木肌と杢模様を活かす塗装
    素材のよさを保つ塗料を用いて優しい木肌を感じられるようにします。

新作こけしの開発におけるこだわり

こけしは子供の遊び道具として造られたのが始まりで、その後に温泉のおみやげ、そして現在は観賞用として楽しまれるようになりました。東日本大震災では心を癒してくれる民芸品として再注目され、今年はアマビエこけしが登場するなど、人々の暮らしの中に常に寄り添ってきました。

これらの先代たちの想いや長い歴史を大切にして造ります。今回初登場させるこけしには、次のような楽しみ方が持てるように工夫をしていきます。

 ♥ 見て  和む
 ♥ 手に持って  落ち着く
 ♥ 一緒に連れていって  悦ぶ

うっとり、まったり、ほっこりするユニークでコケティッシュなあたらしいこけし。

そのためには新作こけしに似合う新しい自然素材が必要と考えました。

こけしの木材としては現状ではミズキやサクラが主に使われますが、他の広葉樹も使えるようになれば作品の世界が広がります。今後は国内産の未利用材も試していきたいです。染料についてもこけしへ色付けするのに適した自然塗料を見つけましたのでこれを試してみます。自然環境へ配慮しつつ、安全に加えて退色しにくいなど質を向上させて、皆様の手元で永く「愛されるこけし」になることを目指します。

ロクロ加工では単純な形を追求するのがこれまでのこけし造りの在り方でしたが、ゆこけし研究所では「こけし」の基本形を守りながらも、高級置物に迫るデザインを追い求めます。

こけし制作における時代変遷を調べてみると、明治初期に山奥まで国による原木の管制支配が及び、やがて燃料の需要が炭や薪木から石油とガスに変わったことが重なり木地師は山から麓に降りざるを得ませんでした。そして冬場の生活の糧を得るためにこけし造りが盛んになり、その後は明治から大正にかけて2人挽きロクロが1人挽きロクロとなり、昭和の戦前には水力発電の電動ロクロが開発されるなど、時代の変化に合わせて生産性を飛躍させてきたのでした。戦後は工房に旋盤が入り、近代では電動ロクロにインバーターが付くなど技術導入による改良の連続性が見られます。このようにして現代の高品質なこけし造りへと繋がっていたことがわかりました。

そこで、将来に向けた活動ステップとして、こけし用に使える木材として国産材それも東北地方に多く存在する広葉樹にこだわり種類を増やしていきます。彩色については工人が安心して使えて木肌の感触を楽しめる油性染料を選び、さらには多色使いが可能になることを追及していきます。身近な自然素材を使うことで人にも自然環境にもやさしいものづくりをしたいと考えています。

自由な発想ができる「新型こけし」の可能性を極限まで引き出してみます。これによりこけし工人の創造意欲を広げると共に、「新型こけし」の新たな制作スタイルによりブランディングを確立して、こけし工人の制作環境の向上を目指します。